犬種には流行があり、やがて完全に姿を消してしまうこともあります。サリッシュ・ウール・ドッグは、貴重な毛を得るためにネイティブ・アメリカンが飼育していた、真の「羊犬」ともいえる絶滅犬種です。
サリッシュ海岸部族は、現在のワシントン州とブリティッシュコロンビア州に暮らしていました。彼らは白く長い毛を持つ犬を注意深く育て、5月または6月になると羊のように毛を刈り、毛糸の原料としていました。
サリッシュ・ウール・ドッグは、真の畜産によって作り出された、北米で唯一の先史時代の犬種と考えられています。つまり、共同体に役立つ特性を生み出すため、選択的かつ意図的に繁殖された犬種です。部族内のほかの犬は意図的に育種されておらず、偶然や自然選択によって特性を発達させていました。サリッシュ・ウール・ドッグは、島や柵で囲まれた洞窟で、12~20頭ほどの群れとして、地域のほかの犬から隔離されていました。
ウール・ドッグには、生鮭や加熱したサケが与えられていました。今日では、被毛の質と艶を向上させることがよく知られているため、ドッグショーの世界でもフィッシュオイルが使われています。
サリッシュ族は羊を手に入れることができず、また山羊の毛を集めるのは危険だったため、犬の毛が代用品として用いられました。
毛糸の品質を高め、貴重な毛の供給を増やすため、犬の毛には山羊の毛、羽毛、植物繊維など、ほかの地元の素材が混ぜられていました。
ヨーロッパ人の北米到来は、サリッシュ・ウール・ドッグの終焉の始まりでした。羊やハドソン湾毛布が手に入りやすくなったこと、さらに病気や紛争によるネイティブ・アメリカン人口そのものの減少により、伝統的な飼育方法は失われていきました。サリッシュ・ウール・ドッグはほかの犬種と交配するようになり、その特徴的な特性を失い始めました。19世紀半ばまでに、サリッシュ・ウール・ドッグは独立した犬種としては絶滅したと見なされるようになりました。1940年には、知られている最後のウール・ドッグの子孫が亡くなりました。
サリッシュ・ウール・ドッグは単なる伝承にすぎないと主張した懐疑論者もいましたが、近年のDNA分析によりその説は覆されました。現存するサリッシュ族の織物作品のいくつかには、犬の毛が使われていることが証明されたのです。

今日、サリッシュ・ウール・ドッグは、サリッシュ海岸部族の口承史と、博物館のコレクションに保存されている儀式用の毛布の中に生き続けています。また、太平洋岸北西部の部族を研究していた科学者がかつて飼っていた、「マトン」と名付けられた犬の毛皮も、ワシントンD.C.の国立自然史博物館の引き出しから再発見されました。


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